部門委員会 活動報告(2008-06)

 

会誌2007年6月号(Vol.56,N0.6)掲載

 建設材料の中で最も多く利用されている材料の一つであるセメントコンクリートは,種種の合成樹脂材料と併せ用いることによって,各々の単独使用では得ることのできない各種の優れた性能を発揮させることができる.

 このような試みは世界的にも種々の観点から行われており,これらの成果は”コンクリートにおけるポリマーの利用に関する国際会議”,第1回ロンドン(1976年5月),第2回オースチン(1978年10月),第3回は日本材料学会共催のもと郡山(1981年5月)で,さらに第4回ダルムシュタット(1984年9月),第5回ブライトン(1987年9月),第6回上海(1990年9月),第7回モスクワ(1992年9月),第8回オーステンデ(1995年7月),第9回ボローニア(1998年9月),第10回ハワイ(2001年5月),第11回ベルリン(2004年6月)などで発表されている.なお,第12回は韓国で2007年に開催される予定である.また,1989年京都で,日本材料学会共催のもとで開催された”第8回アルカリ骨材反応に関する国際会議”においても,主として補修関係で,種々の成果が紹介されている.

 コンクリートと合成樹脂との使用に当たっての組合せとしては,次のような形態が一般的である.

(1)レジンコンクリート(REC),ポリマー含浸コンクリート(PIC)あるいはポリマーセメントコンクリート(PCC)としての構造材料への利用.

(2)表面処理,ひび割れ注入,鋼板接着,パッチングあるいはオーバーレイなどのコンクリート構造物の補修・補強用材料としての利用.

(3)耐久性,遮水・遮塩性,発水性,耐磨耗性等に注目した,含浸,塗装,コーティングあるいはライニング用材料としての利用.

(4)プレキャスト部材等における構造用接着剤としての利用.

(5)建設分野における繊維強化プラスチック,連続繊維補強材としての利用.

 以上のように樹脂は多方面で利用されており,これらの用途のそれぞれで要求される目的・方法に適する樹脂の種類も多い.しかし,細部ではこれらの樹脂の持つ性能は異なる点が多く,しかも,目的・方法に対して必要とされる性能についてもまだ明確にされたとは言い難い面を持っている.このため,コンクリート工事に樹脂を利用するうえでの問題点について調査研究を行い,樹脂の適正利用について検討し,さらにこれら樹脂の用途に応じた試験方法ならびに使用指針の作成を目的として1963年(昭和38年)2月に本委員会は設立された.

 委員会の活動成果として,1967年(昭和42年)には”コンクリート構造用接着剤(エポキシ樹脂)試験方法および施工指針(案)”を作成した.また,ポリマーセメントコンクリート小委員会およびレジンコンクリート小委員会を設け,”試験室におけるポリマーセメントモルタルの作り方”,”ポリエステルレジンコンクリートの強度試験用供試体の作り方”など計10種のJIS原案の作成に協力し,1978年(昭和53年)4月にJIS A 1171〜1174,1181〜1186としてこれらの制定をみている.2000年(平成12年)10月〜2002年(平成14年)3月にはレジンコンクリート関連JIS改定等検討WGを設け,JIS A 1181〜1186の統合改正に協力し,2005年(平成17年)には統合された新たなJIS A 1181が制定された.一方,レジンコンクリート設計(施工)小委員会を設け,1985年(昭和60年)に”ポリエステルレジンコンクリート構造設計計算指針(案)”を,1991年(平成3年)に”ポリエステルレジンコンクリート配合設計の手引き(案)”を作成した.2002年(平成14年)10月〜2005年(平成17年)5月にはレジンコンクリート関連事項検討WGを設け,前者を改訂し”レジンコンクリート構造設計指針(案)”を作成した.

 補修材料関連としては,1989年(平成元年)3月には,阪神高速道路公団の委託のもとに設けた橋梁用樹脂小委員会によって,”コンクリート構造物の表面保護工便(案)・同解説”および”コンクリート床版防水工設計施工指針(案)・同解説”を作成している.さらに,この小委員会を発展的に改組して補修用樹脂小委員会を設け,その成果として,1995年(平成7年)には”コンクリート構造物の診断と補修 ―メンテナンスA to Z―”を出版し,これをもとに,翌1996年(平成8年)3月には日本材料学会関西支部との共催で講習会を開催した.さらに,補修材料の性能試験方法に関する土木学会基準の作成に協力し,土木学会において,表面被覆材に関する7種類の試験方法が1997年(平成9年)6月に,ひび割れ注入材・充てん材に関する6種類の試験方法が2000年(平成12年)12月に,断面修復材に関する9種類の試験方法が2003年(平成15年)11月に,それぞれ制定された.

 シンポジウム関連としては,1996年(平成8年)〜2000年(平成12年)の5年間にわたり,日本学術会議材料研究連合会においてコンクリート構造物の補修,補強,アップグレードに関するオーガナイズドセッションを開催したが,これを発展させ,2001年(平成13年)10月に”第1回 コンクリート構造物の補修,補強,アップグレードシンポジウム”を開催し,以降,毎年継続的に開催している.なお,2003年(平成15年)10月開催の第3回以降は,投稿論文に対して査読を行うことにより,「コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集」として発刊し,内容をさらに深化している.

 本部門委員会では,学校,官公庁関係者,設計および施工技術者,材料および製品メーカーなど,外国からの出席者も含めて参加し,樹脂ばかりでなく,ゴム,繊維,なども視野に入れた活発な活動を行っている.今後の活動としても,コンクリート構造物の計画,設計,施工,維持管理において,合成樹脂,ゴム,繊維の特性を有効に利用した新しい種々の使用方法を検討するとともに,コンクリート・樹脂・ゴム・繊維複合系の耐久性能,変形性能,各種強度の把握など様々な問題を取り上げ,本委員会と小委員会,または他関連委員会との合同委員会活動を適宜組合せて運営する予定である.

 本部門委員会への加入に際しては,形式的には本部門委員会開催時に部門委員会の承認を得ることになっている.関心を持たれる会員の加入の申し出をお待ちしている.本部門委員会の年会費として,(社)日本材料学会の年会費(正会員または賛助会員)に加え,20,000円(部門委員会の賛助会員:民間会社から加入する,(社)日本材料学会の賛助会員.1社につき何名でも参加可)または2,000円(部門委員会の正会員:学校・官公庁等から加入する,(社)日本材料学会の正会員)をいただいている.なお,小委員会についても,別途会費を頂いている.

コンクリート工事用樹脂部門委員会
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